漆刷毛ができるまで

漆刷毛は漆工品、漆塗りに用いられ、塗りを左右する重要な用具です。 人毛  を主な原料とし、丈夫で傷みのないまっすぐでコシのある髪が最適といわれています。 また、用途に応じて、毛の部分の厚みや、硬さなどを調節してつくられ高い手作業技術で製作されます。 写真提供:漆刷毛製造処 刷毛や狐   内海氏  

 

– 01 – 毛髪 ( 原毛 ) の処理

原毛の処理を行います。 毛髪には頭皮から分泌される皮脂( 脂気 )が存在します。 毛髪表面に付着したものや毛髪内部に存在する脂が、漆刷毛製作に影響しすると考えらていますが、漆刷毛製作における脂気と刷毛の関係・影響については職人感覚が頼りで学術的には未だ解明されておりません。 スマイルプロジェクトにおいて製作しているウイッグの毛髪も同様です。

まず毛髪を洗浄します。 毛髪は状態や毛質を見てそれぞれに適した方法で慎重に洗浄・脂抜きを行っていきます。 輸入している原料、毛髪は次亜塩素ソーダなどのアルカリ剤を使用して脂抜きを行い、毛の表面の変化を感じながら微妙な調整をしていきます。 薬剤に浸けすぎると毛髪が弱くなってしまうので注意します。 アルカリ剤を洗剤で洗い落とし流水で繰り返しすすぎを行います。 すすぎ後、脱水をして毛髪をのばします。 天気の良い日に天日干しを行ないます。

 

しっかり乾燥させたら毛髪の丈を切り揃えます。 漆刷毛に使われる毛の長さは 20 cm ~ 30 cm櫛で上下に梳かし、短い毛をはじき、長さを均一化させていきます。 クギで作った大きな歯に毛束ひっかけて、毛髪の上下をシャッフルして、根元・毛先を入れかえ毛束を均整化させます。 最後に長さごとに仕分けしていきます。 毛髪下地処理の完成です。

 

– 02 - 毛板づくり ( 毛固め )

糊、漆、水で合わせた溶剤を毛に含ませて櫛と竹棒を使って毛を板状に整えます。 半分を固め、 触っても崩れないぐらいに固まったら、もう半分を固めていきます。 反りがでないように毎日返しながら、一週間以上乾かし寝かせます。 両面仕上がって毛板の完成です。

 

– 03 - 木板づくり

 

毛板を乾かしている間に、刷毛のまわりを囲う木板をつくります。 木は木曽産のヒノキを使用し、水気が多い状態で届いたものを数年間かけ自然乾燥させます。 使える板を選び、製作サイズにカットおおよそ半分を削り、表面を平らにしてていきます。 各サイズに仕上がり木板の完成です。

 

– 04 - 巻き込み

毛板が乾いたら、木板に合わせカットを行います。 サイズによって毛板・木板の組み方も様々です。 毛板と木板を糊漆で固定します。 麻縄で巻き込んで縛ります。 板と縄の間にくさびを打ち込んできつく締め上げます。 締めあげた状態で一週間以上乾燥させて行きます。

 

 

– 05 - 仕上げ

締めあげたモノが乾いたら、縄を解きます。 カンナで薄く削って成型して行きます。 最初から板を薄くしないのは、内部の毛板を木板で守ってもらうためで。 最終的にはヒノキが原料の2割になります。 カンナの歯で毛先 ( 刷毛先 ) に角度をつけます。 版を押して、漆刷毛の完成です!